カタカタ

「テンペスト」のレッスンは終了した。アップダウンの激しいベートーベンさんに疲れたので、しばらくシューマンさんとのんびりすることになった。「子供の情景」は12曲から成るが、以前に「トロイメライ」だけを弾いた。先生の記録によると、それは2017年のことだったらしい。たぶんレッスンに通い始めて間もない頃のことだ。

私にはピアノの基礎が全くない。子供の頃、バイエルを練習する友だちを横目にエレクトーンで「川は呼んでいる」を弾いていた。指の練習など抜きに、いきなり「曲」を弾くから楽しいよ、というのがエレクトーンを選んだ理由だった。(と思う。親が新しいもの好きだったからとか、母の友人の子がピアノに進んだから、だったかもしれないが)

ともかく、基礎がないまま5、6年前にピアノを始めた。楽譜も読めるし指も動くから、力技でやってきた。少しずつピアノに馴染んできたけれど、一年前くらいかな、「基礎的なことをやり直したらきっともっと楽になる」と先生に言われ、スケールやブルグミュラーやバッハを並行して始めた。中でもバッハが面白い。

「インベンションとシンフォニア」ひたすらカタカタと音を並べていく。ペダルを使う必要がないから、今日のように腰が痛くてもなんとか弾ける。ふたつ、あるいはみっつのメロディーが頭の中で並走する。カタカタカタカタ、いくらでも無心に練習できる。感情を入れる必要がないからかな。

昔よく眺めていた、WIndowsのデフラグみたいに、データの断片化が解消されて、脳が最適化されていくような…

といったって、弾いた後に気分がスッキリしているかと言えばそういうわけじゃない。弾いている間だけ気分がいい。だから繰り返す。

sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。