何だか嫌なんだ

ベランダの隅っこさん

常にマナーモードにしているスマホがテーブルの上で震えていた。電話帳に未登録の番号からの電話だった。もしかしたら彼女? と思ったらひどい拒否反応が出て気持ちが乱れた。我ながら情けない。

10日くらい前に、高校時代の友人Aから「住所を教えてくれませんか」というだけのLINEがあった。前にここに書いた友人からだ。あれからLINE通話の着信が一度残っていた以外に半年以上何もなく、忘れかけていたところにいきなり一行のお願いだった。

15年前? ここに引っ越して来たときにはちゃんと住所を送っていた。その後、いつからか年賀状のやりとりも止まっていた(いつも私から先に送っていたのを止めた)から、住所が分からなくなったにしても、今知りたい理由が分からない。

突然「教えてくれませんか?」とだけ訊かれてホイと教えられるほど、今の私たちは遠慮のない間柄だろうか。確かに高校を卒業して10年くらいまではたまに会ってもいたけれど、その後の20数年以上のお互いのことはまるで白紙だ。何も知らない。それでもいつだって元通り近づけるのが友達というものらしいけれども…

でも、いろいろと考えたら怖いじゃない? これまで小さな小さな「おや?」という積み重ねがあったからだろう。私は彼女を信頼しきれていないのだ。

百歩譲って、挨拶や世間話は省略したにしても、理由を書いて「これこれなので住所を教えてくれませんか?」と訊くもんじゃないかと思ってしまう。

「どうして知りたいの?」と聞けばよかったかもしれない。でも「理由」を聞いたらそれに対応しなければならない。だからそのままスルーしてしまっている。

私は薄情なんだろうか。どうして無視していられるんだろう。いや、無視はしていない。ずっと気にはしている。それがまた嫌だ。

少しずつ会話をして関係をアップデートしてからなら…と思うけれど、私は自分からそれをするつもりはない。相手にだけ行動の変化を求めるのは間違っているんだろう。こう見えて繊細なんだからもっと慮ってよ! と思うのも傲慢だろう。分かっている。でも、いつの間にか建ててしまっていた壁はなかなか崩せそうにない。

こんな私に連絡をくれる奇特な旧友に対して、なんて友達甲斐がないんだ。だから友達がいないんだ。

冒頭の電話は、番号で調べたら歯科医院からだった。

sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。