ごきげん貯金をしよう

料理家の山脇りこさんのエッセイを開いたら、「ごきげんは七難隠す」という言葉が出てきた。若いうちはともかく、年配者で「素敵だな」と思える人の特徴は、「機嫌のいい人」なんじゃないかと。

もちろん、色白だったり、スタイルがしゅっとして若々しかったり…に由来する「素敵」もあるけれど、でもまあ、たいていの「美人さん」は若い頃から美人なわけだし、スタイルだって「維持できる体質かどうか」だ。凡人に後付けはできない。でも「ごきげん」は自分次第だろう。顔の美醜や体型に関わらず「素敵な人」はいる。

仕事柄、年配者(と言っても健康にも生活にも余裕のある人たち)と接することが多いが、「あんな風に歳をとりたい」と惹かれる人は、確かに「ほがらかな人」だ。常に口がへの字になっている女性、苦虫を噛み潰したような顔の男性、年齢なりにくすんだ顔色の人が、ぱぁっと笑顔になる瞬間も素敵だけど、普段から「ほがらか」であるに越したことはない。

高校生のころ、電車で一緒になるひとりの女子高生の顔に惹かれて、その子がいるとそちらを見ずにいられなかったことがある。同じ高校の制服を着て同じ学年だったけれど、接点は何もなかった。3年間、一度も話したことはないし、名前も覚えていない。でもその子の顔は思い出せる。

特別に可愛いとか、美人と言われるようなタイプではなかったし、ひとりでつり革につかまって窓の外を見ている人だったのだけど、いわゆる皇室スマイルのように、口角が上がって、口元に笑みが浮かんでいた。いつも同じ顔だった。それほど幸せだからなのか、本当はそうじゃないからなのか、わからなかった。

だから、つまり「笑顔」を装着するだけではなくて、滲み出る「ごきげん」を内蔵したいなと思う。そのためには自分で自分を「ごきげん」にする仕掛けが必要だ。夢中になってしているだけでごきげん、考えているだけでごきげん、思い出しただけでごきげん。ちょっと落ち込みかけた時は、そのごきげんサプリを飲めば回復だ。

自分で自分をごきげんにする方法が、たくさんあればあるほど素敵でいられる。山脇りこさんの場合は、その方法が「ひとり旅」だったそうだ。

私もここで「ごきげんな私」を見せたいなー。

sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。