腹ペコなんだ

一年で一番嫌いな健康診断の日。駅から病院までトボトボと歩いていたら、今年初めて金木犀の香りと出会った。もう咲いていたどころか、満開だ。なんだかウニみたいと思ってしまった。腹ペコなんだ。

いつもの病院だけど、年々いろいろと簡略化されているような、言い換えると雑になってきたような、そんな気がする。まあ、エコー検査の後に温かいタオルで拭いてくれなくたって、コロナのせいでコーヒーとお菓子が出なくなったって、ブランケットがなくたって、いいっちゃいいんだけど、大事にされたいなーと、一つ検査が終わるたびにため息出ちゃう。腹ペコなんだ。

あら、どうして私、今日はこんなに愛想がないんだろう。…と、思うほど、声も笑顔も出なかった。べつに愛想良くする必要もないんだけど、自分の声を自分で聞いて、今日の元気の無さを実感。腹ペコなんだ。

待合室のテレビでぼんやりと台風情報など眺めながら、ああ、誰かと話したいなぁーと切実に思った。窓のブラインドが空気清浄機でパタパタ鳴っている。パタパタッパタパタッ。ああ、そんな些細なことを話したい。

誰でもいいわけじゃない、誰か。

くだらないことを話したい。私は聞き役で、時々ツッコミを入れながら、誰かのおしゃべりを聞きいて笑いたい。ああ、笑いたいなあ。ぴゅんぴゅんと、小気味のいいやり取りをしたい。眠くなるほど笑い疲れたい。そういう栄養がものすごく足りていない。もう一生足りないままかもしれない。話したいなあ…。

腹ペコなんだよ。

sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。