換気が間に合わない

 もともと良好な関係ではあるけれど、第三者がいると、普段よりも親しげに振る舞ってくる人がいる。「ねぇ〜、私たちって仲良しだもんね〜」と、いきなり腕を絡めてくるようなあれである。そういう状況は子供の頃から経験があるけれど、ある程度の年配になってもあるんだということに驚く。

 Aさんは70代の大師匠(女性)。Bさんと私は同年代で、立場的にはBさんが先輩。そのBさんがいると、A師匠が私に対していつもよりぐんと親しげになる。Bさんを無視して「ねえ、さくらいさ〜ん」と同意を求めたり、必要のない話題を急に振ってきたりするのだ。なんだか当て馬みたいだ。

 当然のこととして、私とBさんの間柄はいつまでたってもよそよそしい。私はもっと親しくなりたいのだが、A師匠がBさんの悪い点(仕事上の)を厳しく口にするのを事務所で私が聞いている、ということを、Bさんは知っている。(Bさんに限らず、CさんDさんEさんのことも耳にしているんだけど)

 その内容にしろなんにしろ、私は誰にも話さないけれど、単に「知られている」とわかっているだけで、当人にしてみれば私のことが煙たいんだろうなぁと思う。気軽に愚痴も言えないだろう。直属の師匠さえ、ふっとこぼした後で「あ、これは(A師匠に)言わないでね」なんて言う。言うわけないやんけ。

 小さな組織の人間関係(女性)は面倒くさい。そして私だけ、上にも下にも横にも捌け口がない。人間模様を面白がれたらいいのかもしれないけど、親しい人たちのあれこれを面白がれちゃう自分はたぶん好きになれない。

 午前中は一人でふふふん、午後からは珍しく人が集まってあららん。みんな大人だから黙ってそれなりに振る舞うのがまたむむむん。換気が間に合わない。

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sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。