背中で喋る女

先日の稽古の時にちょっと面白いことがあった。

事務所にいると上の先生方の話が耳に入ってきて、知っている人の評判を聞くことになっていたたまれない。…というようなことをここに何度か書いている。あの人はあーだとかこーだとか、私は聞いていてもいいの? 空気なの? 聞きたくないんだけどーーと。

そしたら先日、その一番上の偉い先生(相当のお年である)が、稽古をつけてくれている時に皆の前で突然言ったのだ。

「僕はね、サクライ君は背中で喋る人だと思ってるんだよ」と。

「は?」である。
みんなキョトンとして、いや、なんの話? 「背中で語る」は分かるけど「背中で喋る」って何よ。

戸惑っていると老先生は、「事務所で僕や○○先生たちがいろいろ話してるとさ、サクライ君はPCに向かったまま背中で言うんだよ。”私はそう思わないけど”とか、”それは違うんじゃないの?”ってさ」と、言って笑うのだ。みんなも釣られて笑う。私も笑うしかない。

いやー、見られていたんだなぁ、私の背中。そして私、背中で喋っちゃってたんだ。バレバレだったんだ。

それが分かったらなんだか気楽になった。

要は、言葉を表現するにはどうしたら……っていう話だったと思うんだけど。
客席に背中を向けて語ろうかしら私。

sakurai
書かなければ忘れてしまうようなことを書き、次の日には書いたことを忘れています。1960年代生まれ。♀。肩書不定。ただの「私」でありたいんだと青臭いことを言っても、読んだらわかるただの主婦。