彼女がLINEの「知り合いかも?」のところに居るのは知っていた。高校時代の友人だ。私は彼女の連絡先をスマホに入れていなかったけれど、彼女のには私の番号が残っていたらしく、「連絡先からお友だちに追加されました」という通知が来たのも、もう何年も何年も前のことだ。
その後、私は彼女を「友だちに追加」するでもなく「ブロック」するでもなく、そのまま「知り合いかも?」にしていた。別に仲違いをしていたわけでも、何か負い目があるわけでもない。ただ、近況報告をしたり思い出を語り合いたいと思わなかったからだ。
私は、高校時代の自分のことがあまり好きじゃない。かといって、現在と切り離して「馬鹿だったねー、あの頃の私って!」と笑い飛ばすのも得意じゃない。できるだけ遠い記憶の彼方に放っておきたいのだ。でも、彼女は昔からちょっと辛辣で、答えに窮するような質問を平気でするところがある。過去のことに対してそれをやられたらたまらないと思う。
ともかく、「知り合いかも?」でよかったのだ。
ところが、どうした風の吹き回しなのか、今日、20数年ぶりに突然メッセージが入った。「この連絡先って、生きてるの?」と。音信不通になった友人も多い昨今、ふと、送ってみようと思いたったのだそうだ。
「生きてるよ〜」と返事を送ったら、「コロナが収まったら会おうよ」という、あの、いま世界中で囁かれているメッセージが返ってきた。「またね」と結んであったから、「またね」のスタンプを返した。
忘れていいのよ、わたしのことなど〜……って、誰の歌だったっけ。
会えば昔通りに話せるのは想像できるし、それが楽しいのも想像できる。でも、そういう時間はなくてもいいかなーと思ってしまう。嫌だな、今の私も。
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